Interviewインタビュー

映画『沈黙-サイレンス-』 
窪塚 洋介さん インタビュー

撮影が長かろうが、寒かろうが、正座して膝が痛かろうが(笑)
それも喜びの1つと思えるほど参加できたことを光栄に思う

マーティン・スコセッシ監督が、原作となる遠藤周作の小説「沈黙」に出会い28年。“人間にとって本当に大切なものは何か”を描く渾身の一作『沈黙-サイレンス-』がついに2017年1月21日(土)より公開される。重要な役どころであるキリシタンの日本人・キチジロー役を熱演し、本作でハリウッドデビューを果たした窪塚洋介さんに本作の見所と撮影秘話について話を伺った。

―完成した作品を数日前にご覧になったばかりだとお聞きしました。まずはじめに、ご覧になった感想をお願いします。

原作にもある要素だと思うんですけど、懐が深い作品です。答えは「これだ」と押し付けるわけではなく、答えに自ら到達するための事実を積み重ねてくれているというか。出来上がった作品を観て、思わず手を合わせてしまうような、ありがたい気持ちになりました。本当に素晴らしい作品です。

―本作への出演を熱望されていたそうですが、撮影を振り返ってみていかがですか?

マーティン・スコセッシ監督は撮影中にも伝わってくるくらい本当に日本に敬意を持って撮ってくださって、1カット撮り終わる度に出てきて「良かったよ」みたいなサインをくれるんですよね。日本を舞台にしているということもあり、日本の役者に対しては特に敬意を払ってくれていた印象があります。セットを建てたり、京都から来ていた着物の着付けをするスタッフの方々にも敬意を払ってくれていましたし、「本当にその時代に起こり得ることなのか」「そのセリフは時代に合ったものなのか」「ちゃんと長崎弁が喋れているか」など細かいところまでこだわってやってくださいました。それを見ていると嬉しかったですし、やる気も出ますよね。山の上での撮影など、かなり寒い時もあったんですけどそれすら屁でもないというか。撮影が長かろうが、寒かろうが、正座して膝が痛かろうが(笑)、それも喜びの1つと思えるほど、参加できたことを光栄に思います。あと、僕は痩せているのでそんなに大変ではなかったんですけど、役作りのために体が大きなアメリカ人チームの役者は撮影中に痩せていかなければならなかったので大変そうでしたね。1日にスープ1杯、サラダだけとか食事制限をしている横でフライドポテトを食べていたりしたので申し訳なかったなと(笑)。

―演じられた役柄「キチジロー」についてどのように捉えられていましたか?

原作では、醜くて弱くて、ずるいというようなイメージが強いと思うんですけど、言い方次第だなって思っていて。踏み絵を踏むという行為1つとっても「踏み絵を踏んでしまう弱さ」と、「踏み絵を踏むことができる強さ」という言い方がある。絶対に誰も踏めないというその空気感の中で踏んでしまうキチジローは弱いのか、強いのか、もはや分からないですよね。

―演じられる上で気をつけていたことは?

もちろんセリフはあるんですけど、キチジローを見ている誰かの目線で描かれているので、余白がすごく多くて。その余白を何で埋められたら俺はキチジローとして生きられるんだろうかと考えた時に、〝イノセント(純潔な・無邪気な)〟というのがキーワードとして出てきたんですよね。「イノセントだから弱い」「イノセントだから強い」「イノセントだから裏切ってしまう」。子どもの頃は皆そうだったと思うんですけど、まだ何が良くて何が悪いというのが分からない、その状態のままキチジローは成長してしまったというか、僕はそういう捉え方をしました。原作の遠藤周作さんも「キチジローは自分だ」とおっしゃっているように、マーティンも共感する部分がたくさんあったんだと思います。そういう意味では、皆がキチジローの中に自分を見てしまうんじゃないかなと思いますね。

―マーティン・スコセッシ監督から言われたことで、印象的だった言葉はありますか?

マーティンが28年間やりたいと思って描き続けてきた「沈黙」の中でキチジローが1番重要な役だって言っていたんですけど、撮影後に「僕がイメージしてきたキチジローじゃなくて、本物のキチジローが撮影現場にいた」って言ってくださって、本当に嬉しかったです。役者を信頼してくれる監督で、今回役作りについては一切話をしていないんですよ。オーディションの時もマーティンがスタッフの人に「よし、キチジロー来たからカメラ回して!」って冗談で言うくらい、最初から信頼してくれていましたね。

―日本を舞台にした本作ですが、実際の撮影は台湾で行われたんですよね?

京都から来た職人さんが本当に体を張って当時の日本を作ってくれました。山の上に村があって、僕はそういう村を見つけてきたのかなって思っていたんですけど、村全部がセットで。「あんな植物は生えていない」とか「鶏の種類が違う、この鶏は日本にいない」とか僕には分からないような細かい部分まで作り込んでくださっていました。「こんな家のドアはダメだ」って作り直してもらっているのを見て、「僕らもそのままでいいんだ」と思わされましたし、「言いたいことがあれば言うべきなんだな」と職人さんたちを見て思いました。

―撮影の合間に共演者の方とお話されることはありましたか?

ドリゴ役のアンドリューは、寝ても覚めてもずっとその役でいるっていう方法をとっている役者さんなんですよ。「この役をそれで挑むのか」と思ったんですけど(笑)。なので撮影中も合間も傍若無人というか、それは後半にいくにつれてどんどん増していくので「これは我慢できない」って思うことも正直ありました(笑)。座長としてあるまじき行為だと思ったんですけどね。出来上がった作品を観て「やっぱりこの役者はすごいな」って思わされましたし、「それだけのものを背負っていたからしょうがなかったのかもな」とも思いました(笑)。撮影期間中、浅野(忠信)さんとホテルのプールで語り合ったりもしたんですけど、ほとんど1人でいる時間が長かったですね。

―最後に、一言お願いします。

日本の役者さんたちも本当に素晴らしいです。僕も手応えというか、新しい場所に辿り着いたなという気持ちになっています。実際に作品を観て、感動的なシーンというわけではなかったんですけど、その堂々たる姿、力強さに泣きました。そういう風にも楽しんでもらえると思いますし、作品ももちろん素晴らしいので、ぜひ劇場で目撃して、体感して、沈黙してください。…嘘です(笑)、感想を言い合ってみてください。

Profile

<窪塚 洋介>
1979年生まれ、神奈川県出身。1995年にテレビドラマ『金田一少年の事件簿』で俳優デビューし、2001年の主演作、映画『GO』では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を史上最年少で受賞する。2006年からはレゲエDeejay「卍LINE」として音楽活動を開始。待機作として、2017年7月公開予定の『アリーキャット』などがある。

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映画『沈黙-サイレンス-』

マーティン・スコセッシ監督が日本を舞台に描く

17世紀江戸初期、激しいキリシタン弾圧の中で棄教したとされる師の真実を確かめるため、ポルトガルから日本にたどり着いた宣教師・ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)。彼の目に映ったのは、想像を絶する日本だった—。

映画『沈黙-サイレンス-』の公開情報

公開日 2017年1月21日(土)公開
原作 遠藤周作「沈黙」(新潮文庫刊)
監督 マーティン・スコセッシ
出演 アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバー
窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ ほか
公式サイト http://chinmoku.jp/
劇場 OSシネマズミント神戸、OSシネマズ神戸ハーバーランド、109シネマズHAT神戸 ほか